大胆な「危機管理投資」と「成長投資」
取組案の例示

PLAN

(1) 食料安全保障の確立

(2) エネルギー・資源安全保障の強化

(3)「現在と未来の生命」を守る『令和の国土強靭化計画』

(4) サイバーセキュリティ対策の強化

(5) 健康医療安全保障の構築

(6) 成長投資の強化

PLAN 01

食料安全保障の確立

PLAN 01

日本の食料自給率は、カロリーベースで38%です。
高温や豪雨災害の頻発により、農家の皆様の大変なご努力にも関わらず、農作物の収量は低下しています。日本近海の魚種や漁獲量も変化しています。
また、中国の穀物輸入量が急増しており、買い負けの恐れがある上、海外依存度が高い肥料・種子種苗の確保など、経済安全保障の見地からも更なる対策が必要です。
世界の食料需要増加とサプライチェーン・リスクを踏まえ、農林水産業・食品産業を成長産業に発展させ、私達が安定的に安全な食料を確保できるようにする取組は急務です。

⚫︎先ずは、中山間地域も含め全ての田畑をフル活用できる環境作りを急ぎます。燃油・肥料・飼料等の生産資材や原材料の価格変動緩和対策、鳥獣被害対策、耕作放棄地解消対策、新規就農者支援も含め、持続的な食料供給に要するコストを十分に考慮した仕組みを導入します。

⚫︎地震・豪雨・老朽化対策を含む農林水産用インフラの保全管理と被災時に備えた共済への支援、食料システムの持続性確保に向けた食品事業者の取組を促進します。

⚫︎我が国の農林水産物・食品は、海外市場でも高く評価されており、伸び代が大きな成長分野です。例えば、欧米諸国でも小麦アレルギーの方が増える中で、「グルテンフリー」よりも厳しい「ノングルテン」基準を満たす日本の米粉製品は、大きな世界市場を獲得できるはずです。日本には、多くの高付加価値食材があり、私は農林水産業や食品産業のポテンシャルは高いと考えます。有事には国内消費を最優先にするべきですが、農林水産業の基盤強化と人材力強化を可能にする体力をつけるためにも、世界の富裕層向け高級食材等の積極的な輸出は必要な取組です。

⚫︎天候に左右されず、自然災害に強く、閉鎖した工場や学校・空き店舗・宇宙でも農作物の生産が可能で、不測時には被災地での食料生産や、海外に依存している種子の緊急増殖にも活用できる、従来型の5倍の生産性を誇るモジュール型の「完全閉鎖型植物工場」が、日本企業により開発されました。世界初の快挙です。気候変動に影響されずに水産物を供給する「陸上養殖」については、日本の学術機関が、過去60年間の取組でも困難だった世界初のイカ養殖技術の開発に成功するなど、多種類の水産物に拡がっています。各種の「植物工場」や「陸上養殖施設」の普及に向けて、高額な初期投資に対して、国による支援を更に強化するべきだと考えます。

⚫︎私が担当してきた S I P(戦略的イノベーション創造プログラム)で実施中の「大豆の育種基盤構築と栽培技術」(高収量・高品質な大豆の新品種開発 ) 、「ブリの次世代養殖システム構築」(省力的な大規模養殖)、「肥料の国内循環 利用システム構築」の事業を促進するとともに、「合成生物学」を活用して 国内で肥料原料を確保できる革新的技術の獲得を目指します。

⚫︎食品トレーサビリティ(追跡可能性)を確保するとともに、食品検疫を強化します。

PLAN 02

エネルギー・資源安全保障の強化

PLAN 02

日本のエネルギー自給率は、12.6%です。 A I の活用やデータセンターの増加による電力消費量の急増は、米国やカナダなどエネルギー自給率が100%超の国も含めてG7においても懸念事項になっています。特別高圧・高圧の電力を「安定的に」「安価に」供給できる対策を講じなければ、日本の立地競争力は弱くなり、自民党が政権復帰する前の過度な円高で海外に転出した企業の国内回帰も困難にします。

また、様々な産業に欠かせない重要鉱物についても、経済安全保障担当大臣として「特定重要物資」に指定し安定供給確保に取り組んできましたが、国際情勢や地政学リスクに左右されない「国産資源開発」についても積極的な投資が必要です。

⚫︎2020年代後半に向けては、軽水炉に比べ、小型化による安全性と経済性の向上が期待されるSMR(小型モジュール炉)や、高温ガス炉など「次世代革新炉」に関する取組を支援します。

⚫︎2030年代に向けては、「核融合炉(ウランとプルトニウムが不要で、高レベル放射性廃棄物が出ない高効率発電設備)」の実装を目指し、私が取り纏めを 担当した日本初の核融合戦略『フュージョンエネルギー・イノベーション戦略』を着実に推進します。
今年3月には、産業協議会(J-Fusion)も設立されました。

⚫︎特に核融合分野では、日本が優位性を持つ数多くの技術を企業が保有しており、医療・希少金属回収・宇宙・海洋・防衛などに応用可能です。発電実証を待たずとも数年以内にビジネス展開できる技術を支援して、経済成長につなげます。

⚫︎様々な「省電力化に関する技術」の実装を支援し、電力使用効率が高い社会設計をします。例えば、最新の冷却技術等を導入し、電力使用効率(PUE)やスペース使用効率(SpUE)が高い、環境配慮型データセンターの整備を促進 するとともに、光電融合技術の普及も応援します。

⚫︎バイオマスなど、地産地消型エネルギー需給体制を構築する『地域分散型エネルギーインフラプロジェクト』を推進し、不測時の大規模停電を防止します。

⚫︎数年後には大量廃棄が発生する初期型太陽光パネルの安全な処分ルール策定 (鉛・セレンによる土壌汚染や感電の防止)とリサイクル技術の開発を急ぎます。

⚫︎次世代太陽電池の筆頭として研究されている「ペロブスカイト太陽電池」の新素材としては、シリコン太陽電池の100分の1の厚さの新素材が発見されました。建物壁面や窓への適用の事業化を応援します。

⚫︎SIPで取り組んできた南鳥島海域のレアアース泥については、探査・採鉱・ 揚泥・製錬まで一連で行うシステム技術の開発を急ぎます。

⚫︎日本のEEZ(排他的経済水域)及び公海における海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊についても、採鉱・揚鉱、選鉱・製錬、経済性評価等の取組を推進します。

PLAN 03

「現在と未来の生命」を守る『令和の国土強靭化計画』

PLAN 03

首都直下地震で855兆円、南海トラフ地震で1541兆円。土木学会が試算した被害額です。
国家予算(令和6年度当初予算)が 113兆円ですから、「事前防災」と「事後防災」強化の必要性は論をまちません。
気候変動による自然災害も激甚化しています。
何よりも大切なことは、「現在と未来の生命」を守ることです。

⚫︎現行の『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』は令和7年度までです。
防災科学の知見も活用し、気候リスク管理も含めた有効な後継計画を策定します。

⚫︎特に、水害・土砂災害の防止対策、建物等インフラの耐震化・防火対策、送配電・上下水道・情報通信網・農林水産施設等の強靭化を急ぎます。

⚫︎災害に係る「予測力」「予防力」「対応力」「回復力」の総合的な向上を図る「防災科学技術研究」を支援します。
土木・建築の耐災害性強化研究も促進します。

⚫︎自然災害からの回復力を高めていくことも重要です。
既にSIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)において、災害対応の情報収集・配信・組織横断での情報共有は進められていますが、更に進化させ、『社会全体の迅速な復旧(レジリエンスの強化)のための方針』を立案します。
方針が明確であれば、社会インフラが優先度の高い順に復旧し、二次災害を回避できる可能性が高くなります。

⚫︎集合住宅の老朽化対策に着手します。
また、全国の空き家は900万戸以上で、防災・防犯上の課題にもなっています。
U R(都市再生機構)を中心に、街づくりとあわせて「買取り」「改築」「管理・売却の代行」を一体的に行える制度を整えます。

PLAN 04

サイバーセキュリティ対策の強化

PLAN 04

国民の生命、金融資産、個人情報などを守り抜くために、サイバー防衛力を世界最高水準に引き上げていくことを目指します。
また、高度なセキュリティとアフターケアを備えた製品・サービスの開発を促進し、国内や友好国に展開することによって、経済力の強化も期待できます。

⚫︎「能動的サイバー防御(ACD)」を可能にするための法制度整備を急ぐとともに、『復旧(レジリエンス)方針』も、策定します。

⚫︎高度なサイバー攻撃に対応するAIを用いた技術、衛星量子暗号通信、耐量子暗号技術などの研究開発を加速するとともに、人材育成を急ぎます。

⚫︎昨今の情報戦では、偽情報やサイバープロパガンダによる認知領域への攻撃が重大な脅威となっています。私達を守るための法制度整備とともに、偽情報を検知・分析・評価する技術の開発を促進します。

⚫︎全都道府県で、自治体と重要インフラ事業者が参加するサイバー攻撃発生時の「リスク点検演習」を実施します。電源車や給水車の派遣場所の優先順位や、影響度・重要度が高い物品の確保と流通方法など、様々な攻撃を想定したシミュレーションを行います。

PLAN 05

健康医療安全保障の構築

PLAN 05

経済安全保障担当大臣として、原材料の殆どを海外に依存していた抗菌性物質製剤を「特定重要物資」に指定し、国産化に向けた取組を始めました。
また、科学技術政策担当大臣として、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)による「創薬力の強化」「治療方法の研究」「医療機器開発」などに取り組んできました。
ワクチンや医薬品の開発・生産は、海外情勢に左右されてはならず、安全保障に関わる課題です。原材料・生産ノウハウ・人材を国内で完結できる体制を構築します。

⚫︎ AMEDが実施している「革新的がん医療実用化研究事業」「スマートバイオ創薬等研究支援事業」「医療機器開発推進研究事業」を促進します。

⚫︎AMEDが支援してきたiPS細胞由来の心筋細胞移植の臨床試験が大きく前進しました。
「再生・細胞医療、遺伝子治療分野」における研究開発を推進し、その成果を早期に患者の皆様にお届けできるよう、取り組んでまいります。

⚫︎今後のパンデミックに備えるべき「重点感染症」の見直しと医薬品等の対応手段確保のための研究開発支援、有事において大規模臨床試験を実施できる体制の構築、緊急承認については新たな感染症発生時の薬事承認プロセスの迅速化に資する準備を進めます。

⚫︎CBRNEテロ(化学・生物・核・放射線兵器や爆発物を用いたテロ)の対策を検討する専門家組織を創設します。
テロに悪用された微生物・化学物質などの特定と拮抗薬やターニケット(止血用の緊縛バンド)の使用が迅速に行われる体制の構築方法を検討します。

⚫︎「国民皆歯科健診」の完全実施に加え、PHRの活用と、「予防医療」や「未病」の取組へのインセンティブを組み込んだ制度設計を検討します。

PLAN 06

成長投資の強化

PLAN 06

日本に強みがある多くの技術の社会実装とともに、勝ち筋となる産業分野につき国際競争力強化と人材育成に資する戦略的支援を行います。

⚫︎全固体蓄電池、産業用機械・ロボット、積層造形技術、マテリアル、電磁波、電子顕微鏡、核磁気共鳴装置、超電導、宇宙(スペースデブリ除去・軌道上サービス・測位衛星・SAR衛星・ロケット等)、コンテンツ関連を含むクリエイティブ産業などの分野につき、更なる国際競争力強化と人材育成に資する戦略的支援を行います。

⚫︎メモリセントリックや蓄電池リサイクル等の技術開発も、促進します。

⚫︎工業製品、環境、エネルギー、食料、健康・医療など適用分野が広く、経済安全保障の強化にもつながる「バイオ分野の事業化・普及」に向けた取組を促進します。

⚫︎「量子技術イノベーション」を進め、量子計測・センシング、量子マテリアル、量子シミュレーショなどの技術領域を支援します。
量子技術は、食品・薬品の微量異物検知、認知症やうつ病の解明、創薬などに役立つ、私達の生活に身近なものです。

⚫︎学術研究機関等による数多くの優れた研究成果が活用されていないケースが散見され、残念に思っています。有効にビジネス展開できる仕組みを整えます。

⚫︎新たな技術領域(6G=Beyond 5G、生成AI、データプライバシー、自動運転、フォーメーションフライト衛星通信など)において、安心・安全・信頼性を確立しながら活用を進めるために、必要な法制度と環境の整備を急ぎます。

⚫︎「社会人が働きながら学ぶ持続教育」「実学重視のルートの多様化」(高専・専門高校の拡充と実学志向の大学への編入、最先端の設備を使った大学教育等)に加え、引き続き「研究者の処遇改善と活躍の場の確保」に注力します。